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現役パーソナルトレーナーが自分の筋肉特性を知る遺伝子検査を体験してみた

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遺伝子検査を体験

 ここ数年の間ですっかりメジャーになった遺伝子検査、以前は高額な費用がかかったものが今では数千円単位で行うことが可能となりました。
 遺伝子検査の草分け的存在、株式会社ハーセリーズ・インターナショナルの『DNA EXERCISE遺伝子検査』を受けてみました。

自分の筋肉が力を発揮する運動を知ることが出来る

 この検査キットでは以下の3種類の遺伝子検査が行えます。パーソナルトレーナーという筆者の立場上、どれも興味深いものばかりです。

ACTN3 ~ 体内の速筋・遅筋の割合に関係
ACE ~ 血液供給量を調整し運動時の疲労度に関係
PPARGC1A ~ ミトコンドリアの生成や機能を調整し運動効率に関係

 ACTN3は筋肉の質が瞬発系か持久系か、ACEは筋肉の持久力の強度、PPARGC1Aは運動後の筋肉の回復能力の3つが計れるというわけです。ちなみに検査とはいっても至ってシンプル、口を2~3回すすぎうがいをした後、キットの説明書に従って付属の綿棒で左右の頬の内側を1分程こするだけです。
 返信用封筒も同梱されているので、必要事項を記入してポストに投函するだけという手軽さ、およそ1~2週間で結果が届きます。

さて、どんな結果が届いたのやら…童心に返ったような緊張と興奮入り混じりながら封を開けてみると、予想とは少々異なった結果が…。

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検査結果レポート

ACTN3 ~ 【R/R型】 
速筋繊維の割合が高くスプリント・パワー系の運動に適している。
ACE ~ 【I/I型】 
血管拡張能に優れ、運動による疲労を感じにくい。
PPARGC1A ~ 【G/S型】
ミトコンドリア増殖能は標準的、運動の継続によってエネルギー産生量は増え、運動が次第に楽に行えるようになる。

中高時代に熱中したバスケは本当に自分に向いているスポーツだったのか?

 筆者は中高とバスケに熱中し全国大会にも出場した経験もあります。しかしながら、どちらかというと短距離よりも長距離の方が得意でした。
 てっきり自分は速筋よりも遅筋の割合が多いのだろうと思っていたのですが、結果は日本人では最も少ない(全体の19%)速筋タイプのR/R型。これはウェイトリフティングや柔道など瞬発系のスポーツに適したタイプで、バスケットボールに適正しているR/X型(速筋と遅筋のバランスが同等程度)とは異なります。
 前時代的な気合と根性で何とかやっていけたけど、実はバスケ向きではなかったのかな?と同封された解説を眺めていくと、なんとも腑に落ちる内容が記載されていました。

 バスケ現役時代は主にインサイドプレーヤーだった筆者、ゴール下では格闘技さながらの力勝負が行われます。
 この点では速筋タイプのR/R型が優位に働き、実際トレーニングによる筋肥大も起きやすくパワー対決では自信をもって勝負していました。
 しかしそうであれば、すぐにエネルギーが底をつき1試合も体力は続かないはずです。割と体力はあった方だと思うのですが…?

 その回答が残り2つの検査結果に隠されていました。筋持久力の強度がわかるACE遺伝子結果はI/I型、これは血管の拡張機能が高く筋肉への酸素や栄養を送り続けることができ、運動による疲労を感じにくいタイプです。
 これは筋持久力トレーニングの効果が出やすいタイプでもあり、つまり筋持久力に優れる遅筋の割合が少なくても、筋持久系のトレーニングを重ねていけば向上はできるということです。

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筋持久力トレーニングの効果が出やすいタイプだった

 現役時代、ケガが多かった筆者はリハビリ期間も多かったため自然と筋持久系トレーニングに慣れ親しんでいたのでしょう。知らないうちに筋持久力が強化されていたのは、まさに「ケガの功名」というわけです。

自分のミトコンドリアを鍛えることでパフォーマンスが上がる

 さて、もう一つがPPARGC1A検査、これは体内のミトコンドリア増殖能力を計るもので、運動後の回復能力がわかります。筆者のタイプはG/S型、日本人の50%が保有する対応で標準的なレベルといえます。

 ミトコンドリアは体内全ての細胞に備わっており、その細胞が活動するためのエネルギーを作り出すことから「エネルギー産生工場」といわれているため、ミトコンドリアの量が多いほど身体の活動レベルも高くなります。

 そして、ミトコンドリアの増加と活動には運動と栄養素が深くかかわってくるのです。
 全身のミトコンドリアの約80%は筋肉に集まっているため、運動であれば速筋・遅筋の双方を鍛えられるインターバルトレーニングが特に有効とされます。
 また、栄養素であれば血液中の赤血球の構成要素となる鉄、代謝機能の補酵素となるビタミンB群、肝機能や血管の状態を正常に保つタウリンの十分な摂取がミトコンドリアの働きを助けるのに役立ちます。
 言いかえれば、ミトコンドリアの増殖および活動に関していえば持って生まれた違いはあるにせよ後天的な要因で変化を加えることが可能というわけです。

子供を超一流のアスリートに育てたいときには早めの遺伝子検査を

 さて、話を本題に戻します。率直に「遺伝子」と聞くと、持って生まれた「才能」「運命」「努力では変えられない」そんな意味合いで捉えられることも多いのではないでしょうか。
 しかし検査結果が明確になったおかげで、筆者のトレーニングプログラムは次のように方針づけることができるのです。

・速筋の割合が高いので筋肥大が起こしやすい(高負荷低回数が有効)
・筋疲労が起きやすい(セット間のインターバルは長めに設定)
・筋持久力を向上させるためには速筋・遅筋を万遍なく鍛える(インターバルトレーニングが有効)
・ミトコンドリアの活動を増やすために栄養バランスを整える(鉄・ビタミンB群・タウリンを積極的に摂る)

 遺伝子検査の結果を元にすることで、闇雲にトレーニングを行うよりも効率的に自分の体質に合ったプログラムを組むことができるわけです。
 パーソナルトレーナーという立場からみても、負荷やセット数などといったプログラム設定を明確に根拠づけることができるのは非常に心強いですね。

 遺伝子検査にはもうひとつの使い方も考えられます。
 子供たちにこの検査を行うことで、その子がどのような運動に適しているかが早い段階で判るのです。今回、体験した検査キットは成人用ですが、同社では子供向けの『DNA EXERCISE Jr.』というキットも販売しています。

 子供を超一流のアスリートに育てたい場合は試してみてはどうでしょうか?

 今後も遺伝子検査の分野は益々発展していくでしょう。それに伴いトレーニング業界もさらなる進化を遂げることができる日もそう遠くないかもしれません。
(文=今野善久)

今野善久
パーソナルトレーナー。高校時代にバスケットボールで全国大会に出場。卒業とともに渡米、マサチューセッツ州立セーラム大学で体育学を学ぶ。 大学卒業後、株式会社NIKE JAPANに就職。営業、データアナリストを勤めた後、トレーナーとしての活動を開始。RIZAPのチーフトレーナーなどを経て、現在はフリーランスの訪問型パーソナルトレーナーとして活動。トレーニングや栄養関連の執筆活動、健康管理のアプリ開発にも携わる。

※この記事は体験談であり、効果効能を紹介するわけではありません。

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